動脈硬化症とは?

動脈硬化症とは、動脈の内壁に脂質(コレステロールなど)が蓄積して血管の内腔が狭くなったり、血管壁が硬くなって弾力性が失われたりする状態を指します。
健康な動脈は弾力性があり、血液の流れに合わせて拡張と収縮を繰り返すことで、全身に効率よく血液を送り届けています。しかし、動脈硬化が進行すると血管の弾力性が失われて、血管が狭くなることで血流が悪くなり、様々な健康問題を引き起こします。
動脈硬化症の原因
動脈硬化症は1つの原因で起こるわけではなく、様々な要因が複合的に影響しています。
- 加齢(年齢を重ねるにつれて動脈硬化は進行しやすい)
- 高血圧症
- 喫煙
- 脂質異常症(LDLコレステロール高値、HDLコレステロール低値)
- 糖尿病
- 肥満
- 運動不足
- ストレス
- 遺伝的要因
- 食生活の乱れ(高脂肪食、高塩分食) など
特に高血圧症、脂質異常症、糖尿病の三大生活習慣病は、動脈硬化症の主要な危険因子となります。
動脈硬化症の症状
動脈硬化症自体は初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、進行して血管の狭窄や閉塞が起こると、血流が悪くなった部位によって様々な症状が現れます。
- 頭部の血管:頭痛、めまい、ふらつき
- 心臓の血管:胸痛、息切れ、動悸
- 下肢の血管:足の冷え、しびれ、歩行時の痛み(間欠性跛行)
- 腎臓の血管:高血圧、腎機能低下 など
これらの症状がある場合は、すでに動脈硬化症が進行している可能性がありますので、早めに受診されることをおすすめします。
動脈硬化症の合併症
動脈硬化症が進行すると、様々な重大な合併症を引き起こす可能性があります。
冠動脈疾患
冠動脈(心臓に血液を送る動脈)に動脈硬化が起こると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患を引き起こします。胸痛や胸部圧迫感、呼吸困難などの症状が現れ、重症の場合は命に関わることもあります。
脳血管疾患
脳の血管に動脈硬化が起こると、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患を引き起こします。突然の片側麻痺、言語障害、意識障害などの症状が現れ、後遺症を残すことも少なくありません。
末梢動脈疾患
下肢の動脈に動脈硬化が起こると、歩行時の痛み(間欠性跛行)や安静時でも痛みが続く重症下肢虚血などの症状が現れます。重症化すると足の壊疽を引き起こし、切断が必要になることもあります。
その他の合併症
- 腎動脈狭窄症(腎臓への血流が減少し、腎機能障害や高血圧を引き起こす)
- 大動脈瘤(大動脈の壁が弱くなり膨らむ状態で、破裂すると命に関わる)
- 腸間膜動脈閉塞症(腸への血流が途絶え、腸管壊死を引き起こす) など
これらの合併症は、動脈硬化症を適切に管理することで予防・進行を遅らせることが可能です。
動脈硬化症の診断
動脈硬化症の診断は、様々な検査によって行われます。
血圧脈波検査
当院では「ABI検査」と「CABI検査」を組み合わせた血圧脈波検査を実施しています。
ABI検査は手と足の血圧を比較することで下肢動脈の詰まりを評価し、「CABI検査」は脈波の伝わり方から血管の弾力性(動脈硬化の程度)を数値化します。
どちらも痛みがなく短時間で終わり、血管の健康状態を簡便に確認できます。
血液検査
脂質異常症、糖尿病、腎機能障害などの動脈硬化の危険因子を評価するために、血液検査を行います。
画像検査
動脈硬化の状態を直接評価するために、以下のような画像検査を行うことがあります。
- 頸動脈エコー:首の動脈の状態を超音波で観察
- CT検査:冠動脈石灰化スコアなどで評価
- MRI/MRA検査:脳血管や大血管の状態を評価
- 血管造影検査:重症例で血管の狭窄や閉塞の詳細を評価 など
※当院で実施していない検査については、必要に応じて専門機関をご紹介いたします
動脈硬化症の治療
動脈硬化症は一度進行すると完全に元の状態に戻すことは難しいため、治療の主な目標は進行を抑制して、合併症を予防することにあります。
生活習慣の改善
動脈硬化症の進行を抑えるためには、原因となる生活習慣の改善が基本となります。バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、節酒などが重要です。
特に高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの危険因子がある場合は、それらの疾患に対する生活習慣の改善も同時に行います。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合や、すでに動脈硬化が進行している場合には、薬物療法を併用します。
高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの基礎疾患に対する治療薬に加えて、血栓形成を予防する抗血小板薬などが用いられます。重症例では、カテーテル治療やバイパス手術などの外科的治療が検討されることもあります。