鼠径ヘルニアとは?

鼠径(そけい)ヘルニアとは、足の付け根(鼠径部)の筋肉や筋膜が弱くなり、そこに隙間や穴ができて、本来腹腔内にある腸管や脂肪組織などが皮下に飛び出してしまう状態です。立ったり、力んだりすると膨らみが現れ、横になると引っ込むことが特徴です。
一般的に「脱腸(だっちょう)」とも呼ばれますが、医学的には「ヘルニア」が正しい名称です。鼠径ヘルニアは珍しい病気ではなく、特に男性に多く見られます。
神戸市北区の藤原台にしむらクリニックでは消化器外科専門医である院長が診察を行い、適切な診断と治療方針のご提案を行っています。「何か出ている」と気になる方は、早めにご相談ください。
鼠径ヘルニアの原因
鼠径ヘルニアの主な原因には以下のようなものがあります。
- 先天的な要因(特に小児の外鼠径ヘルニア)
- 加齢による筋肉や筋膜の弱化
- 慢性的な腹圧の上昇(重い物の持ち上げ、慢性の咳、慢性の便秘など)
- 肥満
- 過去の腹部手術歴 など
鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアの主な症状は以下の通りです。
- 足の付け根に膨らみが現れる(特に立ったり、咳をしたり、力んだりした時)
- 膨らみは横になると引っ込むことが多い
- 違和感や不快感がある
- 痛みを伴うこともある(特に長時間立っている時や重い物を持ち上げた時)
- 大きくなると下着や衣服が圧迫されることがある など
鼠径ヘルニアの種類
鼠径ヘルニアは、脱出する場所によって主に以下の3つのタイプに分けられます。
外鼠径ヘルニア(間接型)
最も一般的なタイプで、特に乳幼児や小児に多く見られます。鼠径管という通路に沿って腹膜が伸び、腸管などが脱出します。先天的な要因が強く、子供の場合は生まれつき腹膜鞘状突起という袋が閉じずに残っていることが原因です。
内鼠径ヘルニア(直接型)
主に中高年の男性に多く見られるタイプです。鼠径部の筋肉が加齢や腹圧の上昇によって弱くなり、腹壁に直接穴が開いて腸管などが脱出します。
大腿ヘルニア
比較的稀なタイプですが、女性に多く見られます。大腿動静脈の近くから脱出するため、鼠径部よりもやや下方に膨らみが現れます。嵌頓(かんとん:脱出した臓器が戻らなくなる状態)のリスクが高いため、注意が必要です。
鼠径ヘルニアの診断
当院では、問診と診察により鼠径ヘルニアの診断を行います。症状や現れ方、膨らみの位置などを確認し、必要に応じて以下のような検査を実施することもあります。
- 立位と臥位での診察(膨らみの出現と消失を確認)
- 腹部エコー(ヘルニアの内容物や大きさを確認) など
検査結果に基づいて、ヘルニアの種類や程度を判断し、適切な治療方針をご提案します。
鼠径ヘルニアの治療
鼠径ヘルニアは構造的な問題であるため、残念ながら自然に治ることはありません。基本的には手術による治療が必要になります。
当院では、主に以下のようなケースへの対応を行っています。
- 鼠径ヘルニアの診断
- 手術の必要性の判断
- 専門機関への紹介 など
症状がない、または軽微な場合は経過観察となることもありますが、以下のような場合は手術を検討する場合があります。
- 痛みや不快感がある
- 日常生活に支障がある
- ヘルニアが大きくなってきている
- 嵌頓のリスクがある など
嵌頓について
嵌頓(かんとん)とは、脱出した腸管などの臓器が元に戻らなくなり、血流が悪くなる状態です。強い痛みや吐き気、嘔吐などの症状が現れ、緊急手術が必要となる場合があります。
以下のような症状がある場合は、嵌頓の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
- いつもは戻せるヘルニアが戻らなくなった
- 強い痛みがある
- 吐き気や嘔吐がある
- ヘルニアの部分が赤くなったり、熱を持ったりしている など
小児の鼠径ヘルニア
小児、特に乳幼児の鼠径ヘルニアは先天的な要因によるものが多く、外鼠径ヘルニアがほとんどです。未熟児や低出生体重児では発症率が高くなります。
小児の鼠径ヘルニアは自然治癒することはなく、基本的には手術が必要です。嵌頓を起こすリスクがあるため、診断がついたら適切な時期に手術を受けることをおすすめします。
乳幼児の鼠径ヘルニアについても当院でご相談いただけます。症状に応じて、適切な専門機関をご紹介いたします。
臍ヘルニア(でべそ)について
臍ヘルニア(さいヘルニア)は、おへその部分の腹壁が弱くなり、腸や脂肪組織が皮膚の下に飛び出す状態で、一般的に「でべそ」と呼ばれています。
小児の臍ヘルニア
小児、特に乳幼児の臍ヘルニアは比較的よく見られる症状です。多くの場合、成長とともに自然に治ることが多く、2~3歳頃までに約80~90%が自然治癒するとされています。そのため、すぐに手術が必要になることは少なく、経過観察となることが多いです。
自然治癒しない場合や、ヘルニアが大きい場合は手術を検討することがあります。
成人の臍ヘルニア
成人の臍ヘルニアは自然治癒することはなく、症状がある場合や大きくなる傾向がある場合は手術が必要になることがあります。