あな痔(痔瘻)とは?

あな痔は医学的には「痔瘻(じろう)」と呼ばれ、肛門の内側と外側を繋ぐトンネル(瘻管)ができる病気です。このトンネルは通常、肛門腺という小さな腺から始まる感染が原因で形成されます。
痔瘻は最初に肛門周囲膿瘍(肛門のまわりに膿が溜まった状態)として発症し、この膿瘍が自然に破れたり、切開して排膿した後、完全に治癒せずに瘻管(トンネル)が残った状態を指します。
あな痔は痛みや不快感だけでなく、膿の排出が続くため、日常生活に大きな支障を来すことがあります。また、自然治癒することは難しく、適切な治療が必要な疾患です。
あな痔の原因
あな痔の主な原因は以下の通りです。
主要な原因
- 肛門腺の感染(歯状線付近の肛門腺に細菌が入り込む)
- 体力低下や免疫力の低下
- 糖尿病などの基礎疾患 など
生活習慣関連の要因
- 長時間の座位
- 便秘や下痢の繰り返し
- 不適切な肛門の清潔保持
- 過度の疲労やストレス
- 栄養バランスの偏り など
その他の関連要因
- 過去の肛門手術の影響
- クローン病などの腸疾患
- 肛門周囲の外傷 など
あな痔の症状
あな痔の主な症状は以下の通りです。これらの症状がある場合は、お早めにご相談ください。
肛門周囲膿瘍の症状(初期段階)
- 肛門周囲の強い痛みと腫れ
- 腫れた部分の熱感や赤み
- 座ることが困難になるほどの痛み
- 38~39℃の発熱
- 全身倦怠感や食欲不振 など
痔瘻の症状(進行期)
- 肛門の外側に小さな穴(外口)の形成
- 定期的な膿や血液混じりの分泌物の排出
- 症状の緩和と悪化を繰り返す
- 間欠的な不快感や痛み
- 感染悪化時の発熱 など
あな痔の最も特徴的な点は、症状が一時的に良くなっても再発することが多いことです。これは瘻管が残っているためで、完全に治療しない限り、膿瘍と排膿を繰り返すことになります。
あな痔の検査・診断
当院では、以下のような検査を通じてあな痔の診断を行います。
問診
いつから症状があるか、どのような経過をたどってきたか、過去に同様の症状があったかなどを詳しくお聞きします。
視診・触診
肛門周囲を観察して、膿瘍や瘻孔の外口の有無、腫れや発赤などの炎症所見を確認します。また、肛門周囲を軽く押して痛みの有無や膿の排出がないかを調べます。
あな痔の治療
あな痔の治療は、症状の程度や瘻管の状態によって異なります。当院では初期診断と初期治療を行い、必要に応じて専門機関をご紹介します。
急性期(肛門周囲膿瘍)の治療
肛門周囲膿瘍の段階では、膿を排出することが最も重要です。局所麻酔のもとで切開し、膿を出す処置を行います。これにより痛みや熱感などの症状は軽減しますが、瘻管が形成されてあな痔になる可能性があります。
慢性期(痔瘻)の保存的治療
あな痔の段階では、基本的には手術による根治的治療が必要となりますが、以下のような保存的治療も症状緩和に役立ちます。
- 抗生物質の投与:感染を抑えるために処方することがあります
- 定期的な瘻管の洗浄:膿が溜まらないように瘻管を清潔に保ちます など
これらの治療は一時的な症状緩和には有効ですが、あな痔を完全に治すことは難しいため、症状が落ち着いた段階で手術を検討することが一般的です。
手術が必要な場合は、専門的な治療が可能な医療機関をご紹介いたします。